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私の愛する男たち

結婚をしても、子どもができても、
夫とは別に愛する男がいる。

初めて手をつないでくれたのも
初めて抱擁してくれたのも
この人だったのだ。

それは恋愛の感覚を知るよりもずっと前に
もっとプリミティブな、原始的な感覚のところで
無意識に私に「男の人」を見せてくれていたのだと思う。

父である。

この週末は父がはるばる単身赴任先のベトナムから
我が家を訪れてくれた。
東京経由で実家に一泊して来たとはいえ
まさに地球半周の旅。
太平洋経由で来ても、ヨーロッパ経由で来ても
あまり距離的には変わらなかったはずだ。

そのくらい遠くから、たった3日間娘に会うために飛んできてくれた。

そういえば、初めてアメリカの地を踏んだ17歳の夏、
私は父とはるばるジャカルタからボストンまで旅をしたのだった。
マサチューセッツのサマースクールに私を送るためだけに
一緒に飛行機に24時間くらい乗って、
ようやく着いたボストンの街のハーバード大学の近くのお店で
初めてニューイングランド・クラムチャウダーを食べた。

あれから10年近くが経つが、当時まさか自分はアメリカ人と結婚し
父をはるばるベトナムから呼び寄せることになるとは想像だにしなかった。
人生は本当に分からないものだ。

夫と父と三人で近くのプリンストン大学に散歩に出かけた。

私にとっての日常の絵の中に父がいることが不思議でならなかったが
父と夫が二人笑い合って話す姿を見るのは
これまでに感じたどんな喜びにも代えがたい
じんわりとした幸福だった。
私の父である男性と、私の息子の父になる男性、
世界で一番愛する男性二人が一緒にいるのだ。
そして、世界で一番愛する男性が、あと一ヶ月でもう一人誕生する。

結婚生活は独身の頃に憧れた恋愛の延長では決してなく
生活や現実に直面しながら共に生き、お互いにとって最高の友達になりながら
成長する過程で、特に一年目はお互いが持ち寄る全く異なる人生の
すり合わせになるから摩擦も絶えない。

けれど、夫と父が隣同士を歩きながら笑い合う、
そんな小さな絵の中に、想像すらしなかった深く大きな喜びが生まれる。

こうしてこれから子どもが生まれ、ますます想像できなかったような
幸せや喜びがやってくるのかなと思うと
人生の広がりに両手を広げてさんきゅー!!と叫びたくなる気分だ。

たくさんの重い日本からのおみやげと、
余計すぎる寒いおやじギャグ、(しかも英語で言うから余計理解不能)
そしてアメリカに暮らす娘、息子への思いっきりの愛情を残して
あっという間に地球の反対側に戻ってしまった父。

けれど父が運んだ家族の温かい残像は、アメリカで離れて生活する私たちに
新しい家族の一員を迎えるためのどっしりとした活力を与えてくれた。


また、がんばろう。
by akikogood | 2008-08-27 04:40 | 大切な人
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