<   2009年 03月 ( 3 )   > この月の画像一覧

ありがとう運転手さん

先日、用事があって久しぶりにニューヨークまでバスに乗った。
6ヶ月になる息子との長旅はどきどきする。
バスの中で大泣きしたりしないかな。

乗車するときに、挨拶を交わしたときから感じの良い運転手さんだなと思った。

高速に乗る前に、お決まりのアナウンスが流れる。

「現在、ニューヨーク方面での渋滞は報告されていないので、到着予定は大幅にはずれない見込みです・・・携帯電話の利用には、マナーを守ってください・・・使ってもいいんです、ただ大声で話さないように!あなたの隣には他の人が座っていることをお忘れなく・・・」

そこまで言って

「・・・このバスで大声を出してもいいのは、そこにいる赤ちゃんだけです。
がんばって黙らせようとしないでいいですよ、お母さん!」

そして車内にはお客のあたたかい笑い声が満ちた。

私はとっても嬉しくて、ありがとう!と叫んで、高速で流れる景色をニコニコしながら息子と一緒に眺めて
いつの間にか息子と一緒に眠ってしまった。
[PR]
by akikogood | 2009-03-29 22:17 | 花鳥風月

マーサ

近所のスーパーのレジスターで働くマーサが
4月から他の店舗に移ってしまうのだという。

「最近のバイトの子たちは本当に働かなくて、見ていてイライラするし
もう長い間あのお店にいるから、心機一転、新しい環境に入ってみるのも良いかと思ってね。」

そう言う彼女は、いつも制服のポケットに、大量に切り抜いたクーポンを持っていて、
お客さんが来ると、このクーポン使いなさいよ!とか言いながらそれをくれたりする。

「どんなに他のレジスターが空いていても、絶対に私のレジスターに並んでくれるような
お客さんがたくさんいるから、そんな人たちに会えなくなるのは寂しいけどね。」

私たちも、そんなお客たちのひとりだ。

結婚する前から、アメリカに来て今の夫と買い物に行くたびにマーサには良くしてもらっていた。
二人で買い物に行くと、夫に重いほうの袋を渡して
「男なんだからちゃんと運びなさいよ!ほら、ちゃんとあなたたち手をつないで!」
とニコニコしてくれた。

そうして結婚して、子どもが出来る前のわたしたちのことも
妊娠してからの数ヶ月間も、さらに息子が生まれて今に至るまで
ずっと私たちのことを見ていてくれている人が、いなくなってしまうようで寂しい。

妊娠中、大きなお腹で買い物に行くたびに、楽しみね、楽しみね、と繰り返しニコニコしてくれ
あまりにも好きなおばちゃんだから、ベイビーシャワーに呼んだら
可愛いベビー服を持って駆けつけてくれた。
産後、一番最初に手伝いに来てくれたのも彼女だった。
クリスマスにもおもちゃのギフトを持って訪ねてきてくれた。
グリーンカードの面接の日、赤ちゃんを連れていけなくて困っているというと
私を呼びなさいよ!と言って、
そうだあの日はオバマ就任の日できっと家でお母さんと二人で黒人にとっての
歴史的瞬間を分かち合いたかったに決まっているのに
うちにきて、子守をしながら一人でテレビを見ていた。

家に帰ってきたら、暖房がついていなくてびっくりしたら
「付け方がわからなくて。でもベビーは毛布に包まってて暖かくしてあるから」
なんていって、そりゃ息子は大丈夫そうだけど、あなた寒かったでしょうというと、
全然大丈夫よ、なんていいながらもくもくとクーポンを切り抜いていた。
私は慌てふためきながら暖房を入れて、二人でお茶を飲みながら
ミシェル・オバマのあの緑色だか黄色だかわけのわからないゴテゴテのドレスは
マハラジャの妻みたいでマジ趣味が悪いとか
誰よりも幸せそうに見えるのは、副大統領ジョー・バイデンのバービー人形みたいな夫人だとか
そんなどうでもいい話をグダグダしたのだった。

先月も、木曜日のオフの日にやってきてくれて、たまには夫婦でデートしてきなさいよと
勧めてくれたけれど、夫の帰りが遅い予定だったので、
じゃあマーサからソウルフードを習いたいなと私が言うと、
スーパーに連れて行ってくれて、どっさりチキンとヤムとグリーンズを買い込んで
うちのキッチンで二人でフライドチキンを揚げまくった。

でも、いざチキンを揚げ終わってみると、
「私、チキンは胸しか食べないから」といって
その日はたまたまドラムスティックしか買っていなかった私は
すごくショックで、じゃあ買い物のときに教えてよーと半分涙声で訴えると
だってあなたがドラムスティックが好きでそれを選んだなら私は自分の好みなんて押し付けたくないもの、
私はそういうひとなの、と笑いながら言って、
結局本当にチキンは一切手をつけずにヤムとグリーンズだけ食べていた。
マーサが丁寧に剥いたチキンはやわらかくて美味しかった。

彼女の愛する息子のジョーダンはもう高校2年生で、将来はプリンストン大学に進みたいというから
私ががんばるのと言って、毎日毎日夕方6時から夜12時まで、土曜日も日曜日もレジスターで働く。
シングルマザーで、息子のお父さんの話は、これまでに一度もしたことがない。
糖尿病のお母さんと、息子と、3人で暮らしている。

「この夏はね、ジョーダンとフロリダのディズニーワールドに行きたかったけれど
学校の海外派遣プログラムでヨーロッパに行くって言うのよ。
残念だけど、ま、それが彼がしたいことならしょうがないわね。」


妹に日本から持ってきてもらった和風のデザインのアルバムをお礼にあげたら
すごいきれい、と心から弾んだ声を出して喜んでくれた。
フライドチキンを揚げるときに使った、日本のから揚げ粉を見て
これ、アメリカでは買えないわよね?と言うから
ジョーダンへのおみやげにしたフライドチキンと一緒にあげたら嬉しそうだった。

「色んなお客さんと仲良くなったけど、さすがにあの人たちの住所までは知らないから。
でもあなたたちとは、はは、チキンまで一緒に揚げちゃったわね。」

そういいながら、また来るわ、と真夜中に帰っていった。

4月から彼女がいないお店は、なんだか違う場所みたいになるねと夫が言う。

でも、きっとだいじょうぶ。

私たちも、がんばらなくては。

日本のから揚げ粉で、彼女は胸肉のチキンを揚げてみたかな。
[PR]
by akikogood | 2009-03-29 22:01 | ニュージャージー

Home, Sweet Home New Jersey

我が家に世界一周旅行をしているという友達がやってきて、一晩泊まって行った。
インドに始まり、ヨルダン、トルコ、スペイン、エジプト、南米を廻り、と
小さなデジカメの中には広い世界の素晴らしい風景やおいしそうな料理がたくさん撮られていて
リビングルームの椅子に座って、夫とそのカメラを囲みながら
ほぇ~わぉ~すげ~とただただ感嘆の声をあげた私は
立ち上がりもせずにすっかり世界一周したような気分になっていた。

割とアウトゴーイングな性格なはずなので、さぞかし旅行も好きだろうと
自分でも思っていたら、案外そうでもないらしい。

もっと自由だった学生の頃から、そんなにたくさんの場所に行ってみたいという気持ちは
強くなかった気がする。
それでも、ほぼ毎年海外に出ていたのは、
そこには会いたい人がいたからだと思う。

その旅行をしていた友達も言っていた。
「スペインはあまり覚えてないな。ずっと一人だったから。ずっと寂しかった。
寂しさしか覚えてない。」

バックパッカーで世界一周をするくらいだから、さぞかし一人でいろんなところに行ってみたい
一匹狼野郎なのかと思った。
でもやっぱり旅先旅先で国籍に囚われず色んな人と知り合いになって、
すったもんだをしながら信じられないような話を聞いたり
たまにご飯を分け合って、擦り切れた本でも交換してこそ
旅の風景が織られてゆくのだろう。

それは、やらスフィンクスを見た、トルコのケバブがうまかった、インドは本当に汚い、やらを
デジタルカメラの中に収めることではなく、そんなことを伝え合える、感動し合える相手がいてこそなのだ。

その土地を自分の心の中に本当に根付かせてくれるのは、
どれだけその地に滞在したか、住んだのか、ではなくて
いつもいつもそこで知り合える人なのだ。
そこに顔がなければ、ただの風景でしかないものが、人がいてこそ家になるのだと思う。

子どもが生まれてから、突然人のつながりが増えたニュージャージーでの生活は
突然パレットに色彩が添えられたかのように生きているものになったと思う。

なんでもできる、やってみると結婚して海外に来たけれど、
当然のことだけど一人では何もできなくて、人とのつながりにいつも焦がれていた。

ただただ、同じように子どもがいるからという理由だけで
笑顔でいつも助けてくれるたくさんの新しい友人に囲まれて
まだこの場所がただの土地だった1年前を思い出す。
それはママ友だなんて言葉で括るには申し訳のないような
真摯で優しいつながりで、あたたかい。

本当を言えば、まだまだこのバカでかい国にも慣れないし
足りないものもたくさんあるし、もっとこうだったらいいのに、こうしたいのにと思うこともあるけれど
ここが家になった、そして家族がいる、友達がいる、
毎日の生活があるということはかけがえのないことだなとつくづく思う。

感謝をしきれないけれど、ありがとう。
[PR]
by akikogood | 2009-03-13 05:10 | ニュージャージー