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クロッカスの坊や

ニュージャージーで最初に春の訪れを告げる花は桜ではなかった。

木の根元などに小さく薄紫色の花を咲かせていたのはクロッカス。

まだ色のない景色の中、そこだけほんわりと春色に色づいているのを
ストローラーに息子を入れてお散歩している最中に見つけて
長かった冬がようやく終わるのを知りどれだけ嬉しかったか。

ところで、この花の名前を知ったのは、はるか昔小学校1年生のときだったと思う。

国語の教科書の中に、『ぼくにげちゃうよ』という可愛らしいうさぎの話があった。
うさぎの坊やが、お母さんうさぎに
「ぼくにげちゃうよ」と言えば
お母さんうさぎは坊やに「あなたが逃げるのなら、お母さんは追いかけますよ」と言う。
坊やが、「僕は逃げて雲になっちゃうよ」と言えば
お母さんは「あなたが雲になるのなら、私は風になって、あなたを私の方へ吹き戻すわよ」と言う。

そうやって、坊やとお母さんの追いかけっこが繰り返される中に
「じゃあ僕は逃げてクロッカスの花の中に隠れちゃうよ」と坊やが言い、
お母さんが「じゃあ私はお庭に出て行ってあなたを見つけますよ」というようなくだりがあり
それは可愛らしいクロッカスのお花の挿絵があったのだ。

小学校1年生の初めての教科書のにおいと、教室の中に沸き立つ新鮮さを今でも覚えている。
そんな小さい心ながらに、お母さんと坊やの追いかけっこはほほ笑ましくて、大好きなお話だった。
当時は教科書の音読が宿題だったけれど、私の母もその音読を聞くのがとても嬉しそうだった。

そうして知ったクロッカスの花に、
自分の息子が生まれて初めての春に出会えるとは当時は想像もしなかった。

お母さんとぼうやの果てしのない愛らしい追いかけっこを思い出しながら
クロッカスの花から伝えてもらった春だった。


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by akikogood | 2009-05-09 06:46 | レビュー

ニュージャージーの春

しばらくブログを更新しない間にも、時間は脈々と流れて
ニュージャージーにもついに春がやってきた。

裸だった枝々にも若草色の葉がつき始めて
庭先にはカラフルな花が競うように咲いている。
いつの間にやら鳥も種類を増して姿を現し始めて、
あ、あれはブルージェイ、あれはカーディナル、と名前を少しだけ覚えると
ふと出会えたときに嬉しくなる。

小さな小さな赤ん坊だと思っていた息子も、
なんだかあっという間に大きくなり最近は大分感情も豊かになった。
あぁ、家族が増えたなぁとしみじみ思う。

温かい友達に囲まれ、あっという間に過ぎてゆく毎日だけど
学ぶことはいつもあって、細かな発見をするたびにちょっとずつまた視野が広がるようで嬉しい。

何かの雑誌で、結婚したてのキャリア派の女優が
「生活をするって、こんなにも工夫を凝らせることだったのかと結婚してから知りました」
とか言っていたのをかじり読んで、前はふ~ん、主婦ってそんなものかしらとか思っていたけれど
本当にそうだ。

家電製品のガジェットひとつ取っても、こだわれば目に見える成果があるわけで
大げさだけど、家を大切にすることってこういうことの積み重ねなのかと思う。
冷凍の方法から、どこで品質の高い安全なものを買うか、はたまたどうやって
家族をブタインフルから守るかまで、こまごまこまごま、たくさんの工夫や想いが
家を守る人たちの中には詰まっていて、
それがあってこそ家族が帰る家があるのだなぁと思う。

そうして自分が家庭を築き上げる立場になるまで見えなかったけれど
私もそんな想いのたくさん詰まった家にずっとずっと安心して住んでいたのかと思うと
どれだけ両親に甘えて過ごしていたのかがよく見えて
恥ずかしさのあまり悶え死にたくなるのと、
お母さんの気持ちがわかって切なくなるのと、
でも今じゃこんな遠いところで暮らしてしまっていて寂しくなるのと、
全部ごちゃ混ぜにしてミックスジュースを飲み干すしかない。

今年も店頭にはもう母の日のカードが並び始めた。
マザコンを恥じないアメリカ人のマッチョな男たちが
今年もこぞってブリブリのピンク色のカードを一生懸命に選ぶ光景が見られるだろう。

自分が母になって初めての母の日、
今年はどんなカードをエアメールで送ろうか。
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by akikogood | 2009-05-02 13:16 | 花鳥風月