突然だが、今自分が暮らしている環境は、どのくらい「当たり前」のことだろう?
例えば大学に行くこと、車に乗ること、携帯で電話をすること、マックで朝ごはんを食べる、ブログを書く・・・ 一応ドラえもんが誕生した21世紀なので、そんなことを世界中で何億もの人々が当たり前のスタンスで毎日繰り返しているわけだが、その普遍性はどこまで浸透しているだろう。 そういえば数ヶ月前、ブラジルの熱帯雨林の奥地の少数民族が、飛行機を槍で狙撃している映像がメディアに流れた。 よく世界探検系のバラエティー番組でも、「ジャングルの奥地で原住民と一緒に住む!」とかなんとか特集が組まれたりしているけれど、そうして「文明社会」から切り離した生活を選んでしている人たちにとって、カメラやその他色んな機械が自分たちの生活の中に入ってくることをどう考えているのだろう。 突然なぜこんなことを考えるのかというと、実は近所にアーミッシュのマーケットがあることを教えてもらい、早速行ってきたからなのだ。 詳細はウィキピディアをご参照いただきたいが、アーミッシュとは18世紀くらいにドイツから迫害を逃れてアメリカに移住したキリスト教一派の人たちで、現在も18世紀当時の生活様式を守って暮らしている。18世紀当時の生活様式、というと、車の代わりに馬車に乗る、電話は使わない、電気の使用も最小限にとどめ、蝋燭を使うなどかなり厳格な規律があるようだ。 青、または黒に白いエプロン、シャツという簡素な服しか着用しないので、外見ですぐにアーミッシュだと分かる。 そうして、普段は外の世界と隔離し自分たちのコミュニティー内での自足自給生活を営んでいる彼らだが、自分たちで作った食料を売り商売を行うこともある。 食の安全性が問われている今だからこそ 彼らがつくる食品はオーガニックということで評判が高い。 そんなわけで、訪れてみたアーミッシュマーケット。 夕方に行ったのだが、結構な人でびっくりしてしまう。 そして実際に商売をしているアーミッシュの人々、当たり前だが、本当にアーミッシュだ。 なんというか、まず顔つきが違う。 ドイツ系なのでもちろん白人なわけだが、そこらですれ違うアメリカンな顔つきではない。 かといって、ヨーロッパ人というかんじでもない。 血が濃い、と表現するのが一番的確だと思うけれど・・・ 調べてみると、アーミッシュの人々はコミュニティー外の人との婚姻を認めていないので、コミュニティー内での婚姻を繰り返すうちに血が濃くなりすぎて、通常なら数万人に一人の発病率の遺伝病が数千から数万倍の確率で発症したりと問題もあるという。 次に驚くのはたくさんの子どもたちが商売をしているということ。 カウンターにいるのはどうみても中学生か高校生くらいの少年少女たち。 学校は行かないのかなと疑問に思ったが、どうやら彼らはコミュニティー内の独自の学校に通うか、家庭学校で教育を受けるらしい。 アーミッシュは、高等教育は良くないものとして考えているらしく、中学校2年生程度の知識を身につけた後、ほとんどの子どもたちは高校にも行かずこうして働き始めるのが通常とのこと。 お肉のコーナーは様々な人々が押し合いへし合い状態で列を作って待っていて、 ターキーレッグを買うのにしばらく時間がかかってしまう。巨大なもの2本で7ドル。 お肉好きのアメリカンにはたまらないだろう。 ヨーグルトもラベルすらついていない自家製のもの。 食べてみるとクリーミーでとってもおいしい。 メープルシロップ味が素朴で一番のお気に入りだ。 他にも野菜やパンなんかも売っていて、どれも新鮮でおいしい。 スーパーの無人キャッシャーでロボットのごとく喋りまくるレジを相手に買い物するのに慣れて来たところで、こうしていちいち八百屋、肉屋、パン屋とアーミッシュの子どもたちやおっさんとおしゃべりしながら買い物するのもまた楽しい。 ミーハー根性を発揮し、前回訪れたときには写真の一枚でも撮って ブログに載せようとデジカメを持参。 カバンからゴソゴソ出すと、思いっきりレジのおねえさんにらまれてしまった。 カメラを構えてもいないうちから、ものすごい目力でにらまれたので、すっかりビビってしまい(い、いやぁー写真を撮ろうなんてそんな愚行は一切しようと思っておりません、ただ、荷物をちょっと整理したかっただけで・・・)と目で訴えるに終わり、写真は撮れずじまい。 後から知ったがどうやらアーミッシュの人々はカメラや鏡などがあると、どうしても自分たちの外見に目が行ってしまい、それは自分たちの簡素な服装をするという規律を守ることを脅かすことになると考えるらしく、写真などは極端に嫌うらしい。 すみません・・・ ところで、果物コーナーにあるバナナ、何故にDoleブランドのスティッカーが? まさかメキシコから馬車で輸入か? そして何故に簡素な格好の子どもの足元、 よくよく見てみりゃあのピカっと光るライトが入ったハイテクスニーカー?? そもそも、何故何故マーケットのチラシにcome to our website! ってウェブサイト持ってるのん??? アーミッシュ、カメラは嫌いだが、馬車に揺られつつラップトップでウェブページ製作ですかね? そんな矛盾もなんだかかわいいアーミッシュマーケット。 「シックスセンス」を製作したM・ナイト・シャマラン監督の 「ビレッジ」という映画をご存知だろうか。 18世紀ヨーロッパを思わせる小さな村にはある言い伝えがある。 森を越えてはならぬ、と。その森には「魔物」が棲んでおり、 境界を侵すとその魔物に喰われてしまう、と。 恋人が重症を負い、どうしても薬が必要になった盲目の少女は、両親に懇願し、 その森をたった一人で越え、「町」へ行く許可をもらう。 ようやくたどり着いた森の果て、その「町」の道は、アメリカのある自然保護区の道路だった。 目の見えない少女は、自然保護区のレンジャーに薬をもらい、 自然保護区の柵の向こうへ戻ってゆく・・・ 現代社会に嫌気がさした数人の人々が、自分たちの共同体を作ろうと、森の奥に移住し、 「魔物」の言い伝えを広めながら古いヨーロッパの生活スタイルに擬似した 共同体を維持していた、という話だった。 アーミッシュや世界各地の少数民族は、この情報が溢れる世界でどのようにして 自分たちのコミュニティを維持しているのだろう。 いや・・・まてよ・・・今、私が住んでいるこの世界だって、もしかして「魔物」がいて、 そこには境界線があるのかもしれない・・・ そう、「当たり前」は見えないものだから。 井戸の中の蛙は、井戸さえ見えないのだから・・・ 映画The Villageより
by akikogood
| 2008-11-19 02:28
| ニュージャージー
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